自動車の安全運転支援システム(ADAS)は、年々進化を続け、今では新車に標準搭載されることも珍しくありません。トヨタやホンダ、日産など各メーカーは、事故を未然に防ぐための先進技術を投入していますが、実は多くの機能が「搭載されているのに使われていない」現実もあります。この記事では、各社の代表的な支援システムを比較し、なぜ一部機能が敬遠されがちなのかを最新調査と2025年の技術動向をもとに徹底解説します。
安全運転支援システム(ADAS)の使われる機能と使われない機能を徹底解説
安全運転支援システム(ADAS)は年々進化し、国内外で義務化の流れも強まっています。たとえばEUでは2024年7月から段階的にISA(速度制限支援)やAEB(自動緊急ブレーキ)などが既販モデルにも広く義務化され、全車の標準装備化が進んでいます。また日本でも乗用車のAEB装着が2021年から段階導入され、既存モデルへの適用時期も規定されています。これらの制度改正は、メーカー各社の装備内容や名称をアップデートさせる直接の要因になっています。

一方で、ユーザー側の「使われ方」には濃淡があります。J.D. Powerの2024年調査では、死角検知など“体感メリットの大きい機能”は好評な一方、アクティブステアリング等は「過剰」「使いにくい」と感じる声も依然少なくありません。ただしIIHSの2024年調査では、レーン逸脱警報/抑制を「オンのまま」にするドライバーが約9割に達するなど、受容は着実に改善しています。名称の乱立や誤解を減らすため、AAAらは機能名の共通化も勧告しています。
本記事では2025年の最新動向を踏まえ、主要メーカーの注目機能アップデートと、「使われにくい」機能の共通点と対処法を整理します。なお、運転環境や個人の経験により評価は変わり得る点をご理解ください。
2025年版|安全運転支援システム(ADAS)の最新トレンドと普及動向
- 標準装備化と法規対応の加速:EU GSR2の段階施行(2024年〜)や、日本のAEB義務化(新型は2021年〜)で搭載率が底上げ。
- レーン・速度・注意監視の統合:各社ともカメラ+レーダーの併用や、地図・周辺監視の拡張で「曲率に応じた減速」「停止支援」など一歩進んだ支援へ。
- 受容性の改善:レーン逸脱関連の“オフ率”は低下傾向。設計改善(誤警報低減・操作性向上)と啓発が進みつつある。
主要メーカー別比較|ADASの最新アップデートと使われにくい機能の現状
トヨタの安全運転支援|TSS 3.0とPDAの進化ポイント
最新世代のToyota Safety Sense(TSS 3.0)は、カメラ+レーダーで検知精度を高め、Proactive Driving Assist(PDA)によりカーブ進入や前方歩行者に合わせた“そっと減速・操舵”を行います。夜間認識や右左折時の交差点対応も強化。

使われにくい機能の例:オートマチックハイビームや標識認識は、手動で十分と感じる層に敬遠されがち。名称や挙動理解が進むほど受容は上がるため、作動条件の理解・感度調整が鍵。大局的には、警報の“うるささ”を減らす最近のチューニングでオンの維持率は改善傾向にあります。
ホンダのADAS最新情報|Honda SENSING 360/360+の特徴と進化
前後左右+前方の5レーダー+カメラによる360°センシングで死角を低減。将来的にはハンズオフ運転支援や予測カーブ減速、EDSS(緊急停止支援)などの高度化も予告されています。日本向けモデルでも360系の展開拡大が進行。

使われにくい機能の例:レーンキープや標識認識は、介入感や重複感(自分で見える)が理由でオフにしがち。最新世代はステア支援の自然さや誤警報の低減が進み、設定メニューで介入度を下げると受容が向上。
日産の運転支援技術|ProPILOTの進化とハンズオフ条件の拡大
単一車線の支援(1.1)から、地図連携での条件付きハンズオフや車線変更支援(2.0)へと拡張。日本を含む“高精度地図の整備区間”で、ドライバー監視と組み合わせた高度運転支援を実現しています。

使われにくい機能の例:高速主体の機能は一般道メインのユーザーに“出番が少ない”。まずは渋滞時の追従など体感効果が高いシーンから慣らすのが有効。受容度は車線支援の設計と教育で改善傾向。
スバルのEyeSight最新世代|広角化とEyeSight Xの進化
ステレオカメラの視野拡大や、前後レーダー+高精度地図でのEyeSight Xなど、認識範囲とシーンの広がりが特徴。電動ブレーキブースターの採用で自動制動の応答性も向上。

使われにくい機能の例:警報系は環境次第で“うるさく”感じやすい。最新世代は誤警報抑制や設定項目の見直しが進み、警報感度の段階調整でオン維持がしやすくなっています。
マツダのi-ACTIVSENSEとCTS|渋滞時運転支援の最新状況
レーダークルーズやLAS/LDWS等を束ねるi-ACTIVSENSEに加え、CTS(Cruising & Traffic Support)で渋滞〜高速のアシストを提供。2024年モデルでもドライバーモニタリングや前後SBSなどの統合表示が整備。

使われにくい機能の例:標識認識や注意喚起は“既知ルートでは冗長”と捉えられがち。まずはBSMや後方SBSなど実害低減に直結する機能を常時オン→慣れたら速度標識表示などを組み合わせると受容が上がります。
ADASが使われにくい理由と改善するための対処法
- ① 警報の煩わしさ:誤警報や頻発警報はオフ化の主要因。最新研究では、設計改善でオン維持率が上がっており、感度調整や作動条件の理解で改善可能。
- ② 自動操舵の違和感:「勝手に曲がる」印象は抵抗につながる。介入度を弱める設定や、レーン維持と車間制御の分離設定で受容性が高まる。
- ③ 名称・期待値のズレ:同等機能でもブランドごとに名前がバラバラで誤解が生じやすい。AAAらは共通名称の採用を推奨。
安全運転支援システムを快適に使い続けるための実践ポイント
- 車両設定の3分点検:レーン系は警報→弱い介入→強い介入と段階化されていることが多い。まずは“警報のみ”や“弱め”で慣らす。
- 体感価値の高い機能から:後退時の後方自動ブレーキやBSMは満足度が高い傾向。ここから常時オンに。
- メーカーの公式ガイド活用:TSSのPDAの作動条件、CTSの対応速度域、ProPILOT 2.0のハンズオフ条件など、公式資料で“できる/できない”を確認。
2025年のADAS総括|義務化・高度化・受容改善で広がる未来
2025年のADASは、法規で底上げされつつ、カメラ+レーダー+地図の統合で高度化。ユーザー側も設計改善や啓発でオン維持が進行しています。とはいえ、“うるさい/勝手に動く”と感じるポイントは個々で異なるため、作動条件の理解・感度/介入度のチューニング・体感価値の高い機能から採用という順序で、あなたのクルマに最適化していくのが最短ルートです。
注:この記事の評価や事例は、各社の公式情報・主要調査・規制資料をもとに2025年9月時点で整理しています。今後のOTAアップデートや法改正により仕様や名称、作動条件が変わる場合があります。