「まさか自分が違反切符を切られるなんて…」。
雪の舞う路上で警察官に止められ、初めて事の重大さに気づくドライバーが後を絶ちません。雪道でノーマルタイヤのまま走行することは、単に危険なだけでなく、立派な法令違反であることをご存知でしょうか?
「近所の買い物程度なら」「スタッドレスは高いから」といった油断は、6,000円の反則金だけでなく、万が一の事故の際に取り返しのつかない責任を負うことにもなりかねません。
本記事では、意外と知られていない雪道走行の違反リスクや、事故時の過失割合、そして最新のチェーン規制について詳しく解説します。賢く安全なカーライフを守るために、ぜひ最後までお読みください。
雪道でのチェーン未装着は違反になるのか?
結論から申し上げますと、雪道や凍結路面において、滑り止め措置(スタッドレスタイヤの装着やタイヤチェーンの携行・装着)を行わずにノーマルタイヤで走行することは、法令違反となる可能性が非常に高いです。
「雪国ではないから関係ない」と思われるかもしれませんが、この規定は降雪地域に限った話ではありません。沖縄県を除くすべての都道府県で、公安委員会が定める規則により、積雪・凍結時の滑り止め措置が義務付けられています。
都道府県公安委員会の遵守事項違反
道路交通法第71条第6号には、「道路または交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」を遵守しなければならないと記されています。
これに基づき、各都道府県の公安委員会は「積雪または凍結により滑るおそれのある道路において自動車を運転するときは、タイヤチェーンを取り付ける等、滑り止めの措置を講ずること」といった規則を定めています。
つまり、ノーマルタイヤで雪道を走る行為は、この「公安委員会遵守事項違反」に該当します。
違反した場合の罰則と反則金
では、具体的にどのような罰則があるのでしょうか。ノーマルタイヤでの雪道走行で検挙された場合、一般的には以下の反則金が科されます。
- 大型車:7,000円
- 普通車:6,000円
- 二輪車:6,000円
- 原付車:5,000円
多くのドライバーが気にされる「違反点数」についてですが、この遵守事項違反だけであれば、原則として違反点数の加算はありません(0点)。
しかし、反則金を納めなかったり、悪質なケースとして刑事処分へと移行したりした場合は、5万円以下の罰金となる可能性があります。たかが数千円と思わず、法を守る意識が大切です。
「チェーン規制」と「冬用タイヤ規制」の違い
ここで注意が必要なのが、2018年に新しく導入された「チェーン規制」です。ニュースなどで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。これらは混同されがちですが、求められる装備が異なります。
- 冬用タイヤ規制(滑り止め装置装着規制)
- 内容:スタッドレスタイヤ、またはタイヤチェーンのどちらかを装着していれば通行可能。
- 場所:雪が降っている多くの道路で実施されます。
- チェーン規制(2018年導入)
- 内容:スタッドレスタイヤを装着していても、タイヤチェーンを装着していなければ通行不可。
- 場所:大雪特別警報や大雪に対する緊急発表が行われるような異例の降雪時、勾配のきつい特定の区間で実施されます。
- 目的:大規模な立ち往生を防止するため。
チェーン規制が発令されている区間で、チェーンを巻かずに走行することはできません。現場には警察官や道路管理者が立ち、チェックを行っています。この指示に従わずに強引に通行しようとすれば、警察官現場指示違反などが問われる可能性も出てきます。
雪道で事故を起こした場合の責任と過失割合
違反以上に恐ろしいのが事故です。雪道でノーマルタイヤを使用し、スリップ事故を起こしてしまった場合、法的な責任や保険の扱いにおいて、ドライバーは極めて不利な立場に立たされます。
ノーマルタイヤでの走行は「重過失」になるリスク
交通事故の過失割合(どちらがどれくらい悪いか)を決める際、雪道でノーマルタイヤだった事実は、「著しい過失」または「重過失」と判断される要因になります。
通常、追突事故などは追突した側に100%の責任があることが多いですが、スリップ事故などで相手を巻き込んだ場合、本来の過失割合に加え、10%〜20%程度の過失が上乗せされるケースが一般的です。
「予期せぬ雪だった」という言い訳は、天気予報や道路情報を容易に入手できる現代において、通用しにくくなっています。
保険金が支払われない可能性
さらに深刻なのが、自動車保険(任意保険)への影響です。
対人賠償や対物賠償(相手への補償)については、被害者救済の観点から支払われることがほとんどですが、ご自身の車を直すための「車両保険」については、支払われない、あるいは減額される可能性があります。
約款において、「法令違反や重過失がある場合、免責とする(支払わない)」といった条項が含まれていることがあるからです。「自分は大丈夫」という過信が、経済的にも大きなダメージを招くことになります。
立ち往生させてしまった場合の法的責任
事故だけでなく、雪道でスタック(立ち往生)し、後続車を渋滞させてしまった場合も責任が問われます。
特にチェーン規制区間などで、チェーン未装着により立ち往生し、道路の通行を著しく妨害した場合は、道路交通法違反としての処罰だけでなく、道路管理者から損害賠償を請求されるリスクもゼロではありません。
国土交通省も「立ち往生車両のドライバーに対する行政処分の厳格化」を検討するなど、社会的な目は年々厳しくなっています。
ドライバーが講ずべき安全対策
リスクを回避し、安全に冬の道を走るためには、事前の準備がすべてです。
スタッドレスタイヤとチェーンの正しい使い分け
「スタッドレスを履いているから万能」ではありません。確かに近年のスタッドレスタイヤの性能は向上していますが、凍結した急な坂道や、新雪が深く積もった道では限界があります。
- 基本装備:冬の間はスタッドレスタイヤを装着する。
- 緊急用:トランクには必ずタイヤチェーンを積んでおく。
この「二段構え」が、シニア世代の賢いドライバーの常識となりつつあります。特に、金属チェーンは安価でグリップ力も強いため、万が一の脱出用として常備しておくことをおすすめします。
天気予報と道路情報の確認習慣
出かける前には必ず天気予報を確認しましょう。目的地の天気だけでなく、通過する経路の気温や降雪予報も見ることが重要です。
現在は、国土交通省や高速道路各社が、リアルタイムで路面状況や規制情報をWebサイトで公開しています。
「怪しいな」と思ったら、勇気を持って「車で出かけない」という選択をすることも、立派な安全運転技術の一つです。
もしもの備え:車載しておくべきアイテム
雪道でのトラブルに備え、以下のアイテムを車に積んでおくと安心です。
- 作業用手袋(軍手ではなく防水・防寒のもの)
- 解氷スプレー
- 長靴
- 懐中電灯
- 防寒具・毛布
- スコップ(軽量なもので可)
これらは、いざチェーンを装着する際や、立ち往生して救助を待つ際に命綱となります。
