「スタッドレスタイヤを履いているから、冬の高速道路も安心だ」もしそう思われているなら、少しだけ認識をアップデートする必要があるかもしれません。2018年の法改正により、特定の区間で大雪になった場合、「スタッドレスタイヤだけでは通行できない」厳しい規制が導入されているのをご存知でしょうか。
かつて現役バリバリでハンドルを握っていた頃とは、道路交通法も車の常識も変化しています。定年を迎え、奥様との温泉旅行やグルメ旅など、自由な時間を愛車と共に楽しむ「アクティブな第二の人生」。その道中で、予期せぬ足止めを食らったり、警察官にUターンを命じられたりしては、せっかくのプライドも台無しです。
この記事では、シニア世代のドライバーが知っておくべき「新しいチェーン規制」の真実と、スタッドレスだけでは通れない「全国13の要注意区間」について詳しく解説します。また、体力に自信がなくなってきた方でも簡単に装着でき、愛車のホイールも傷つけない最新のチェーン事情もご紹介。知識と装備を整え、スマートで安全な「上がりの1台」での冬ドライブを楽しみましょう。
高速道路の「チェーン規制」とは?スタッドレスでも通れない真実
「スタッドレスタイヤを履いているから、どんな雪道でも大丈夫」
もしそう思われているなら、少し注意が必要です。実は、2018年の道路法改正により、「チェーン規制」の定義が大きく変わりました。
かつては「冬用タイヤ規制(滑り止め装置装着規制)」のことを指して「チェーン規制」と呼ぶこともありましたが、現在運用されている新しいチェーン規制は、「スタッドレスタイヤを装着していても、物理的なタイヤチェーンを巻いていなければ通行できない」という、非常に厳しい命令です。

定年を迎え、愛車で夫婦水入らずの温泉旅行や、冬の味覚を求めるドライブを楽しむ方も多いでしょう。しかし、知らずに規制区間に突入すれば、その場でUターンを余儀なくされるか、最悪の場合は立ち往生の原因となり、高額な反則金だけでなく、社会的な責任を問われる事態にもなりかねません。
「上がりの1台」として選んだ大切な愛車を守り、スマートなカーライフを続けるために、今の時代に即した正しい知識を身につけておきましょう。
なぜスタッドレスだけではダメなのか?
近年のスタッドレスタイヤの性能向上は目覚ましいものがあります。氷上性能や雪道でのグリップ力は、ひと昔前のスパイクタイヤに迫るほどです。
しかし、この新しいチェーン規制が導入された背景には、「異例の大雪」があります。2018年の福井豪雪など、短期間に集中的な降雪があると、どんなに高性能なスタッドレスタイヤでも、新雪の抵抗で前に進めなくなったり、磨かれたアイスバーンで坂道を登れなくなったりする車両が続出しました。
たとい1台でも立ち往生すれば、後続車がつかえ、大規模な交通麻痺が発生します。自衛隊が出動するような事態を防ぐため、「特定の区間で、大雪警報が出るような緊急時に限り」、物理的なチェーン装着を義務付けることになったのです。
これは、「あなたの運転技術が未熟だから」ではありません。「物理的な限界を超える雪」に備えるための、社会的なルールなのです。
「冬用タイヤ規制」と「チェーン規制」の決定的な違い
ドライバーが最も混同しやすいのが、この2つの規制の違いです。ここを間違えると、現場で警察官に止められることになります。
冬用タイヤ規制(滑り止め装置装着規制)
内容: 雪道用タイヤ(スタッドレスなど)またはチェーンのいずれかを装着していれば通行可能。
現状: 高速道路で「雪」の表示が出た場合、ほとんどがこの規制です。スタッドレスタイヤを履いていればそのまま通過できます。
チェーン規制(新しい規制)
内容: どのようなタイヤを履いていても、必ずタイヤチェーンを装着しなければ通行不可。
現状: 大雪特別警報や大雪に対する緊急発表が行われるような、異例の降雪時にのみ発令されます。

つまり、ニュースで「チェーン規制が発令されました」と聞いた場合、それは「スタッドレスだけでは通れない」ことを意味します。
【最新版】スタッドレス不可!全国13箇所のチェーン規制区間
この厳しいチェーン規制は、全国どこでも発令されるわけではありません。過去に大規模な立ち往生が発生した場所や、勾配がきつく雪深い「難所」として、国土交通省が指定した全国13区間(高速道路7区間、国道6区間)に限定されています。
ご自身のドライブ計画にこれらのルートが含まれていないか、確認しておきましょう。
高速道路(7区間)
高速道路では、主に山越えの区間が指定されています。
- 上信越自動車道(新潟県・長野県)
- 信濃町IC ~ 新井PA(上り線・下り線)
- 妙高高原周辺の豪雪地帯です。
- 中央自動車道(山梨県)
- 須玉IC ~ 長坂IC(上り線・下り線)
- 首都圏からのアクセスも良く、利用者が多い区間ですが、勾配があります。
- 中央自動車道(長野県)
- 飯田山本IC ~ 園原IC(上り線・下り線)
- 恵那山トンネルを含む、山岳ルートです。
- 北陸自動車道(石川県・福井県)
- 丸岡IC ~ 加賀IC(上り線・下り線)
- 過去に豪雪による立ち往生が発生したエリアです。
- 北陸自動車道(福井県・滋賀県)
- 木之本IC ~ 今庄IC(上り線・下り線)
- 関西と北陸を結ぶ大動脈であり、雪深い難所です。
- 米子自動車道(岡山県・鳥取県)
- 湯原IC ~ 江府IC(上り線・下り線)
- 中国地方の山間部を抜けるルートです。
- 浜田自動車道(広島県・島根県)
- 大朝IC ~ 旭IC(上り線・下り線)
直轄国道(6区間)
高速道路だけでなく、主要な国道でも規制が行われます。迂回路として国道を選んだら、そこも規制対象だったということがないように注意が必要です。
国道112号(山形県):月山道路周辺
国道138号(山梨県・静岡県):山中湖・籠坂峠周辺
国道7号(新潟県):村上市大須戸~上大鳥
国道8号(福井県):石川県境~あわら市周辺
国道54号(広島県・島根県):赤名峠周辺
国道56号(愛媛県):鳥坂峠周辺
これらの区間は、あくまで「指定区間」です。雪が降れば必ず規制されるわけではなく、「集中的な大雪」が予想される場合にのみ発令されます。しかし、発令された場合は、チェーンを持っていない車は問答無用で通行止めとなります。
見逃すと危険!標識と現場での対応方法
では、実際に走行中、どのようにして規制を判断すればよいのでしょうか。標識の見方と、現場検問での対応について解説します。
「青いタイヤ」の標識に注意
新しいチェーン規制の標識は、既存の規制標識を組み合わせたデザインになっています。
図柄: 青い円の中に、タイヤにチェーンを巻いたイラスト(規制標識310-3「タイヤチェーンを取り付けていない車両通行止め」)。

補助標識: 標識の下や横に、文字等の電光掲示板で情報を補足しています。
高速道路上の電光掲示板では、「チェーン規制中」「全車チェーン装着必要」といった強い表現で警告が出されます。「冬用タイヤ規制」という表示とは明確に区別されていますので、見落とさないようにしましょう。
検問では「装着確認」が行われる
チェーン規制が発令されると、規制区間の手前にあるパーキングエリア(PA)やチェーン着脱場(チェーンベース)に全車両が誘導されます。
そこで警察官や道路管理会社の係員が、「実際に駆動輪にチェーンが巻かれているか」を目視で確認します。
チェーンを持っているだけではNG: トランクに積んであっても、装着していなければ通過できません。
四輪駆動(4WD)でもNG: どんなに高性能なSUVや4WD車であっても、スタッドレスタイヤ単体では通過できません。必ずチェーンが必要です。
ここでチェーンを持っていない、あるいは装着できない場合は、その場でUターンして規制区間外へ出るか、規制が解除されるまで数時間(場合によっては数日)待機することになります。これは、せっかくの旅行を台無しにするだけでなく、家族や同乗者に大きな不安を与えることになります。
シニア世代が選ぶべき「恥ずかしくない」チェーン
「チェーン規制の怖さはわかったが、今さら鉄の鎖を巻くのは体力的にきつい」
「高級セダンのアルミホイールに傷をつけたくない」
そうお考えの方も多いはずです。昔ながらの金属チェーンは安価ですが、装着が難しく、乗り心地も悪く、ホイールを傷つけるリスクがあります。
アクティブな第二の人生を楽しむ皆様には、「取り付けが簡単」で「見た目もスマート」な、次世代のタイヤチェーンをおすすめします。
布製チェーン(オートソックなど)
今、輸入車オーナーやシニア層の間で最も注目されているのが、布製(ポリエステル等の特殊繊維)のチェーンです。
メリット:
圧倒的に軽い: 1kg程度と非常に軽く、女性や高齢者でも楽に扱えます。
装着が簡単: タイヤに靴下を履かせるように被せるだけ。ジャッキアップも不要で、慣れれば左右で数分で終わります。
乗り心地が良い: 金属のような振動や騒音がほとんどありません。
ホイールに優しい: 布製なので、大切なアルミホイールに傷がつきません。
デメリット:
耐久性が低い:乾燥路を走るとすぐに破れます。あくまで「雪道緊急用」です。
おすすめの理由:
「万が一のチェーン規制」をクリアするためのお守りとして最適です。トランクに入れても場所を取らず、スマートです。BMWなどの欧州メーカーも純正採用しており、見栄えも悪くありません。もちろん、日本のチェーン規制にも適合しています。
非金属チェーン(バイアスロンなど)
ゴムやウレタンなどの樹脂で作られたチェーンです。
メリット:
グリップ力が高い: 金属ピンが埋め込まれており、アイスバーンでも強力にグリップします。
耐久性が高い: 布製よりも長く使えます。
装着が比較的簡単: 最新モデルは、ハンドルを回すだけでロックできるなど、力がいらない工夫がされています。
デメリット:
かさばる:トランク内でそれなりのスペースを占有します。
価格が高め:2万円〜3万円程度と、金属チェーンより高価です。
おすすめの理由:
スキー場へ頻繁に行くなど、雪道を走る機会が多い方にはこちらが安心です。「イエティ スノーネット」のような、さらに取り付けが簡単な高級モデルもあります。
「上がりの1台」で安全に旅するための心得
人生経験豊富な皆様であれば、リスク管理の重要性は十分ご承知のことと思います。車の運転においても、それは同じです。
チェーン規制への備えは、単なる「道具の準備」ではありません。「自分はベテランだから大丈夫」という過信を捨て、「自然の猛威に対して謙虚になる」という、大人のドライバーとしての品格の表れでもあります。
事前の練習が「余裕」を生む
いくら簡単なチェーンを買っても、吹雪の中で、かじかんだ手で初めて説明書を読むのは困難です。
晴れた暖かい日に、ご自宅の駐車場で一度だけ「装着の練習」をしてみてください。
「ああ、こういう構造か」と一度理解しておくだけで、現場での精神的な余裕がまったく違います。奥様の前で、スマートにチェーンを装着し、颯爽と雪道を走り抜ける。それこそが、頼れるパートナーとしての姿ではないでしょうか。
無理をしない勇気
そして最後に。チェーンを持っていたとしても、チェーン規制が出るような大雪の日は、「勇気ある撤退」も選択肢の一つです。
予定を変更して宿でゆっくり過ごす、あるいは日程をずらす。時間に縛られない今の生活だからこそできる、贅沢な選択です。無理をして危険な目に遭うよりも、安全を最優先することこそが、真の「ドライブの達人」と言えるでしょう。
まとめ:備えあれば、冬のドライブはもっと楽しくなる
新しいチェーン規制は、私たちドライバーを苦しめるものではなく、命を守るための命綱です。
チェーン規制=スタッドレス不可、チェーン必須と心得る。
指定された13区間を通る際は、天気予報を念入りにチェックする。
布製や非金属製など、扱いやすく愛車を傷つけないチェーンを用意する。
一度は装着練習をしておく。
これらの準備ができていれば、冬のドライブは怖くありません。雪化粧をした山々の絶景、冷えた体に染み渡る温泉、その土地ならではの冬の味覚。
愛車と共に、安全で快適な「アクティブ・セカンドライフ」の旅をお楽しみください。しっかりとした準備こそが、あなたのプライドと安全を守る、最強の同乗者となるはずです。


