60歳を迎えると、「これが人生最後の車になるかもしれない」と感じながら、次の一台を慎重に選ぶ方が増えています。
定年退職や子育ての一区切りを迎え、生活スタイルや車の使い方が大きく変わるこの時期。若い頃のように「速さ」や「デザイン」だけでなく、これからの10年・20年を見据えた“安心して乗り続けられる車”が求められます。
運転支援システムや安全性能、乗り降りのしやすさ、維持費の負担、そして夫婦や家族との時間を楽しめる快適性など、選ぶ基準も変化しています。この記事では、「60歳 最後の車」をテーマに、後悔しない愛車選びのポイントや人気車種、安全性能や維持費の比較まで詳しく解説します。人生のパートナーとなる一台を見つけたい方に向けて、これからのカーライフを豊かにするヒントをお届けします。
なぜ60歳で“最後の車”を考えるのか
ライフステージの変化と車選び
60歳前後という年齢は、仕事・家庭・生活のいずれもにおいてひとつの区切りとなる時期です。定年退職や再雇用、子育て世代から夫婦だけの生活へ、そして住宅ローンをほぼ終えたという方も少なくありません。こうした変化の中で、車に対するニーズも「通勤・子どもの送迎」から「自分自身の時間」「夫婦・友人とのドライブ」「趣味に使える移動手段」へと変化していきます。そのため、60歳という節目で「これが人生最後の車になるかもしれない」という意識が高まるわけです。
また、若い頃には選ばなかった“安心”“快適”というキーワードが重視されるようになります。運転に対する体力・反射神経・視力の変化を感じ始めたドライバーもおり、車を選ぶ際の基準が変わる時期とも言えます。
このように、「60歳で最後の車を選ぶ」という考え方には、これからの残りのカーライフをいかに楽しむか、あるいは安心して過ごすかという実用的かつ感情的な背景があります。

“最後の車”という位置づけの意味
「最後の車」という言葉には、単に大きな買い物を行うという意味だけでなく、「あと10年、15年乗れる車を納得して選ぶ」という意味が含まれます。若い頃の車のように“最新でスポーティ”“高速性能が高い”といった観点だけではなく、「毎日の使いやすさ」「安全性」「維持のしやすさ」「自分が心から気に入るデザインや乗り心地」をトータルで考える時期なのです。
さらに、車は移動手段としてだけでなく、夫婦や友人との思い出づくり、趣味の足として、あるいはこれからの人生をより豊かに過ごすためのパートナーともなり得ます。だからこそ「最後の車」を軽視せず、慎重に選ぶ価値があります。
このような背景から、特に60代ドライバーには「次が最後かもしれない」という思いが芽生え、車選びに対して丁寧な視点が求められているのです。
60代が車選びで特に重視すべき条件とは?
運転のしやすさと安全性能
60代からの車選びでまず外せないのが、安全性能と運転のしやすさです。加齢に伴い、視力・反射神経・筋力・集中力などが微妙に変化していきます。これによって、車の操作に感じる違和感や負担も少しずつ増えてくることがあります。
そのため、衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)、誤発進抑制(アクセル踏み間違い防止)、車線逸脱警報、夜間視界支援、視界死角モニターなどの「先進安全装備」が搭載されている車を選ぶことが安心につながります。こうした装備は、運転中の“もしも”の場面でサポートしてくれ、ドライバー自身の負担を軽減してくれます。
また、シニアドライバーに向けて、メーカーや行政も「セーフティ・サポートカー(サポカー)」という区分を設け、安全装備を基準に車を選びやすくしています。搭載装備だけでなく、運転のしやすさという観点でハンドル操作・ペダル位置・スイッチの配置などが自分の身体に負担をかけないか確認することも重要です。

乗り降りのしやすさ・視界の確保
年齢を重ねると、車の乗り降りや姿勢保持、車内での移動にも若干の負担を感じることが出てきます。したがって、シートの高さや座面の硬さ・広さ、ドア開口部の広さ、車高の高さ、ステップの数・幅がどうかをチェックすることが大切です。
例えば「車高が高すぎて跨ぐのが大変」「シートが低すぎて立ち上がるのに力が要る」「足元に障害物があって跨ぐのがつらい」といったケースは、長く乗るとストレスになります。また、運転席・助手席からの視界が良好であること、ミラー・ウィンドウの位置・カメラ・センサー類の視認性が高いことも、安心感につながります。視界が良くない車は“見えにくさから生じる疲労”も招くため、長距離や夜間の運転を想定するなら特に配慮したいポイントです。
維持費・燃費・税金など経済的な視点
60歳からの車選びでは、これからのカーライフを長く走ることを前提に「無理なく維持できるか?」という経済面も大切です。燃費が良い車を選ぶことでガソリン代や電気代(ハイブリッド・EVの場合)を抑えられます。また、軽自動車やコンパクトカーは税金・保険料・車検費用なども比較的低めで、日常の負担を軽くできます。
さらに、中古車やモデルチェンジ直後車を避けて“余裕を持った選び方”をすることで、予測外の修理や部品交換の負担も減らせます。長期で乗るという前提ならば、メンテナンス性も含めて「後からお金がかからない設計」であるかを確認することが安心です。
デザイン・快適性・趣味性も妥協しない
実用性だけを追ってしまうと「味気ない車選び」になってしまうかもしれません。しかし、“最後の車”という意識を持つならば、自分が心から納得できるデザインやドライブ中の快適性、趣味性も重視すべきです。例えば、座席の質感、静粛性、音響設備、室内空間の広さ、荷物・趣味用品が積めるラゲッジの余裕、ドライブそのものが楽しいと思える装備など。
また、夫婦で乗るなら「乗る人も快適か」、孫との移動を想定するなら「後席・荷物スペースも十分か」を考えることも大切です。乗る頻度・用途・目的を想像し、「この車を最後まで自分が好きでいられるか」という視点が満足の差を生みます。
タイプ別で考える「60歳の最後の車」おすすめランキング
軽自動車編:取り回し&維持コストの安心スタイル
軽自動車は、小回りが利き、狭い道や駐車場の多い都市部でも運転しやすいという特長があります。税金・保険料・燃費など維持コストも低めで、初心者にも安心しやすいタイプです。室内空間が意外に広く設計されているモデルもあり、実用性・利便性ともに高評価です。
その一方で、高速道路での長距離移動や荷物が多い用途、大きな車を好む方には少し余裕が足りない場合もあります。ですので、用途として「日常の移動+近場ドライブ」が中心の方には特におすすめと言えます。

コンパクトカー編:バランス重視の選択肢
軽自動車より少し大きく、しかし取り回しや維持費の負担がそこまで高くないコンパクトカーは、60代の“最後の車”候補として非常にバランスが取れています。安全装備の充実度も上がってきており、燃費性能・乗り心地・静粛性・室内の快適性も軽自動車以上というモデルも登場しています。都市部から郊外までストレスなく使えるため、「日常+週末ドライブ+たまに遠出」という方には特に向いています。
SUV編:視界・余裕・趣味用途を重視するなら
SUVは車高が高く、視界が良く、室内・荷室ともに余裕があります。夫婦でのドライブ、アウトドア、趣味の移動、孫を乗せて出かけるという用途には魅力的です。ただし、車高が高い分“乗り降り時の負担”が大きくなったり、燃費・維持費がコンパクトカーより高めになったりすることもあります。ですので、SUVを選ぶ際は「乗り降りや駐車環境が自分に合っているか」「維持費を含め長く使えるか」を慎重に確認することが重要です。
セダン・ミニバン編:ゆったり・家族・長距離ドライブ向き
セダン・ミニバンは、長時間のドライブや乗員・荷物ともに余裕を持って使いたい方に適しています。背があまり高くなく低重心で安定感があり、乗り降りもしやすいモデルも多くあります。特に夫婦ふたりでゆったり乗るという条件ならば、セダンは上質な選択肢になります。ミニバンは孫や家族との旅行、荷物が多い場面にも強みがあります。
ただし、サイズが大きくなるほど維持費や駐車・取り回しの手間が増えるため、“60代が長く安心して乗る”という観点では、サイズ感・用途・駐車環境をよく考える必要があります。
60代ドライバーが重視すべき「安全性能」のポイント
衝突被害軽減ブレーキと踏み間違い抑制
高齢ドライバーの事故で多く見られるのが、アクセル・ブレーキの踏み間違いや前方車・歩行者との衝突です。これを防ぐために、「先進安全機能(自動ブレーキ、誤発進抑制装置、ペダル踏み間違い時加速抑制装置)」が搭載されている車を選ぶことが、特に重要です。
また、これらの機能には限界もあります。いくら安全装備が充実していても、装備に頼り切るのではなく、安全運転意識・定期的な視力・反射神経チェックも併せて行うことが必要です。
車線維持支援・車線逸脱警報・誤操作抑制
長距離運転や高速道路の利用が増える場合、車線維持支援や車線逸脱警報、ハンドル操作支援といった機能が疲労軽減・誤操作防止に役立ちます。60代になると、「長時間運転後に集中力が落ちてるな」と感じる機会も増えるため、こういった支援機能で運転負荷を減らすことが安心につながります。視界・運転姿勢・操作性が良い車と組み合わせれば、より快適なドライブが可能です。
視界・夜間運転・モニター・死角カメラ
夜間運転や雨・雪・霧といった悪条件下での運転には、視界が良い車を選ぶことが特に重要です。ミラーやカメラ・センサー・全方位モニターなどが搭載されていれば、駐車・狭路・後退時にも安心感があります。高齢ドライバーにとっては、死角の少ない設計、ブラインドスポットモニターがあると「見えない不安」が軽減されるため、選ぶ基準としてぜひ加えておきたいポイントです。
後悔しない“最後の車”を選ぶためのコツ
必ず試乗して自分の身体で確かめる
紙上でスペックを比較するだけではわからないのが、「自分の身体に合うかどうか」というフィーリングです。特に60代では、「シートに座った瞬間の脚・膝・腰の感覚」「ドアを開けて足を運び入れた時の動作」「ハンドル・ペダル・スイッチ類の使いやすさ」「視界の広さ・死角のない感覚」など、自分で体験して確かめることが重要です。
試乗の際は、日常生活で使うルート・駐車場・狭路などを想定して走ってみると良いでしょう。可能なら、晩や雨天時の運転も体験しておくと“安心して使える車”かどうかの判断材料になります。
購入後10年を見据えた維持コストを見積もる
車を買う際には、購入価格だけでなく「10年、15年使った時にトータルでどれくらいコストがかかるか」を計算しておくと安心です。具体的には、燃料・電気代、保険料、税金、メンテナンス(エンジン・足回り・電装部品)、車検、タイヤ・バッテリー交換など。長く乗る予定ならば新品部品交換が少ないモデル・メンテナンスしやすい構造・パーツ供給が安心なメーカーを選ぶと良いでしょう。
また、軽自動車やコンパクトカーはこうした負担が比較的低めですので、経済性を重視する方には特に検討に値します。
家族・パートナーと目的を共有する
車は単独で乗るだけでなく、家族・パートナー・友人との移動でも使われます。夫婦ふたり、孫を乗せてのドライブ、趣味の道具を積んでの移動など、用途を想定しておくことで「この車で十分か」「もう少し余裕が欲しいか」が見えてきます。前席・後席の使いやすさ、荷物スペース、ドア開閉のしやすさ、駐車場や公共施設での扱いやすさなど、家族目線でも“安心して使える車か”を確認することがおすすめです。
また、購入前には家族や同居者とドライブのイメージを共有しておくことで、選び方がぶれずに安心して決断できます。
【2025年版】60歳から選ぶ“最後の車”おすすめ10選
【軽自動車部門】扱いやすく維持費も安い、安心の定番モデル
①ホンダ N-BOX(エヌボックス)
軽自動車の王道モデル。広い室内空間、低い床で乗り降りがしやすく、シートの高さも絶妙。2024年のフルモデルチェンジで安全支援システム「ホンダセンシング」がさらに進化。視界の良さと静粛性も高く、シニア層に最も人気のある一台です。

②スズキ スペーシア カスタム
軽自動車でありながら、ミニバンのようなゆとりある室内。誤発進抑制機能や全方位モニター付きカメラを標準装備するなど、安全面が充実。ハイブリッド仕様で燃費性能も優秀です。

③ダイハツ タント ファンクロス
低床プラットフォームにより、乗り降りがとても楽。助手席側が大開口スライドドアになっており、体の負担が少ない設計。アウトドアや旅行好きなシニア層にも人気です。

【コンパクトカー部門】街乗りも遠出も快適なバランスモデル
④トヨタ ヤリス(YARIS)ハイブリッド
燃費性能が抜群で、最新の「トヨタセーフティセンス」を搭載。加速もスムーズで静粛性も高く、長距離運転でも疲れにくい設計です。扱いやすいサイズ感で、女性ドライバーや夫婦ふたりの利用にもおすすめ。

⑤ホンダ フィット e:HEV
“人中心の設計”を徹底したモデル。大きな窓で視界が広く、運転初心者や高齢者にも安心。電動パーキングブレーキや停止保持機能などが標準装備で、渋滞や信号待ちでも疲れにくい仕様です。

⑥日産 ノート e-POWER
シリーズハイブリッド方式で、静かで力強い加速が魅力。電気モーター走行の滑らかさは病みつきになります。最新モデルではプロパイロット(半自動運転支援)も搭載され、長距離でも安心です。
【SUV部門】視界が高く、余裕のある走りを楽しみたい方へ
⑦トヨタ ライズ(RAIZE)ハイブリッド
コンパクトSUVの代表格。車高が高すぎず乗り降りしやすい設計で、運転席からの見晴らしも抜群。コンパクトサイズながら荷室も広く、週末ドライブや旅行にもぴったり。
⑧スバル フォレスター e-BOXER
安定感ある走りと高い安全性能で、長距離ドライブに最適。アイサイト(運転支援システム)の精度は業界でもトップクラス。四輪駆動なので、雪道・山道にも強く、アウトドア志向のシニアに人気です。

【セダン・ミニバン部門】上質さ・快適性を求める方へ
⑨トヨタ カローラ アクシオ
日本を代表するロングセラー。最新モデルではハイブリッド化され、燃費・静粛性・安全性能が格段に向上。運転席の位置が高く、前方視界も良好。クラシックで落ち着いたデザインも人気です。

⑩トヨタ シエンタ ハイブリッド
ミニバンながらコンパクトなボディサイズで、乗り降りが非常にスムーズ。スライドドア仕様で腰や膝への負担が少なく、孫とのお出かけや夫婦旅行に最適です。ハイブリッド仕様で燃費も優秀。

60歳を迎え、「最後の車」を選ぶというのは、単なる買い替えではなく“これからの人生を共にする相棒”を決めるということです。
安全性・快適性・燃費・維持費のバランスを重視し、自分のライフスタイルに合った車を選ぶことで、70歳・80歳まで快適なカーライフを楽しむことができます。
車を手放す可能性も視野に入れておくべきポイント
運転免許返納・卒業という視点
「最後の車」を選んでも、いつかは運転を卒業する日が来ることも考慮しておくと、安心してカーライフを楽しめます。視力・反射神経・判断力・体力などが変化してきたと感じたら、「返納のタイミング」をあらかじめ夫婦・家族で話し合っておくことがおすすめです。無理をして運転を続けることは、事故リスクを高める可能性があります。
また、既に“返納後の移動手段”を調べておくことで、車を手放した後の生活にもスムーズに移行できます。
返納後の移動手段・カーライフの転換
車を乗らなくなった後の移動手段も、事前に考えておくことで安心です。カーシェア、タクシー、家族による送迎、公共交通、自転車・電動キックボードなど、地域や生活スタイルによって選択肢は様々です。最後の車を選ぶ際には「将来的にこういう移動手段になるかもしれない」といった視野も持っておくと、車を所有する・手放すを含めた選択肢がより広がります。
愛車との思い出づくりで満足度を高める
最後の車として選ぶなら、「どのような思い出をつくるか」を描いてみるのも価値があります。夫婦でのドライブ、趣味の旅行、孫との思い出、故郷への帰省、季節の風景を巡るなど、「この車でこういうことをしたい」というビジョンを持つと、車に対する満足感が高まります。結果として、買ってから「もう少し違う車にすれば良かった」と後悔することも少なくなります。
まとめ|60歳からの“最後の車”は人生のパートナーに
60歳という年齢で車を選び直すということは、単なる買い替えではなく「人生の新たな一章を快適に安心して走るためのパートナー選び」です。安全・快適・維持費・満足度という4つの軸を意識すれば、これからのカーライフを豊かに彩る一台を見つけることができます。
運転のしやすさ、乗り降りの負担、安全装備、経済性、そして自分自身がいつまでも「好きだ」と思えるデザイン・乗り味。これらを兼ね備えた車に巡り合えれば、「最後の車」として長く安心して付き合っていけるはずです。
また、家族やパートナーとの会話や、将来的な運転卒業も含めた視野を持つことで、カーライフそのものがより豊かで安心できるものとなります。
どうか、60代からのカーライフを“最後だからこそ”悔いなく、心から満足できるものにしてください。私たちもそのサポートができれば嬉しいです。
